学習に困難を抱える子どもに、どう関わればいいのか|発達障害と向き合う支援のかたち

発達障害をもつ子どもたちと関わる中で、私は数多くのご家庭を見てきました。中でも強く感じるのは、周囲の大人の関わり方が、子どもの成長や自立に大きな影響を与えるということです。

子どもに学習の困難さがあったとしても、それだけで将来を狭めてしまう必要はありません。大切なのは、「何ができないか」ではなく、「何ができるか」「どこに可能性があるか」を見つけ、寄り添いながら支えていくことです。

本記事では、実際に出会った子どもたちの事例をもとに、発達障害や学習の困難を抱える子どもたちに対して、どのように接し、力を引き出していけるのかを考えていきます。

Table of Contents

発達障害を認めたくない親御さんは少なくありません。特に、ある程度経済的に余裕がある家庭では、子どもの課題が近所に知られるのを避けたいがために、私立校やインターナショナルスクール、フリースクールに通わせることがあります。その中には、子どもを寮に預け、関わりを極力避けるようなケースもあります。

一方で、子どもの可能性を信じて、さまざまな選択肢を模索する親御さんもいます。良い学校を求めて引っ越しをしたり、語学や芸術、スポーツなどにチャレンジさせたりと、情報を頼りに実践していく姿勢は、時に子どもの未来を大きく切り拓く力になります。

私が出会ったある生徒Aさんは、5年間インターナショナルスクールに通い、その後留学を経験しました。しかし、1から10までの簡単な英単語すら、1年かけても書けるようにはなりませんでした。決して努力が足りなかったわけではありません。むしろ、文字を書くことは美しくできたため、書字障害などの問題ではなく、記憶力や学習処理に課題があったのです。

しかし、Aさんには「絵を描く」という大きな才能がありました。プロになれるかどうかは別として、その力をさらに伸ばしていく環境があれば、彼の自信と生きがいに繋がったことでしょう。残念なことに、ご両親は、彼の能力に気づくこともなく、また別のインターナショナルスクールへ転校していきました。

全ての子どもたちが同じ目標に向かって学習しているわけではないことは、親はわかっていますが、何かがよくできる子どもさんを見ると「つい」羨ましくなったり、真似をさせたがったりしてしまいます。進路を決める頃になると、子どもたちは、それぞれ自分の好きなことだったり、得意なことを活かして仕事をしようと考え始めます。その時に、「何もできない」状態では子どもは何も選ぶことができません。小さい頃から、「何が好きなのか」「何に集中することができるのか」などについて、観察し、できることを伸ばしていく環境を作ってあげなければなりません。

次に出会ったBさんは、複数の発達障害を抱えていました。家庭は裕福でしたが、ご両親はその障害を受け入れることができず、Bさんは長く周囲から放置されていました。学習指導もほとんど受けたことがなく、自己肯定感が非常に低い状態だったのです。

しかし、Bさんは写真撮影において素晴らしい才能を持っていました。ある日私は、「写真をネットに投稿してみてはどうか」と提案しました。すると、彼の作品はすぐに注目を集め、高額で売れることとなり、写真が単なる趣味からビジネスへと変わったのです。

誰もがこのような才能を持っているわけではありませんが、できることを見つけ、伸ばせる機会を作ってあげた後は、活躍する場を探すお手伝いをしてあげることも大切だと思います。まずはボランティアからでも、彼らの世界を広げてあげることが、自立への第1歩だと思います。

さらに、楽しめて継続できる場を

活躍できる場があっても、それが苦痛であってはいけません。最近では、長い人生の中で、転職をすることが当たり前のようになってきましたが、発達障害をもった人たちにとっては、簡単ではないかもしれません。「得意なことを活かす」のと同時に「楽しめること」「長く続けることができること」を見つけるお手伝いが必要です。そしてその中で、自立し、生きがいを見つけられるようにサポートしていくのが、周りの人たちができることではないでしょうか。

これらのプロセスを一人で考え、行うのは困難です。だからこそ、周りの人が彼らに情報を提供し、体験できる機会を与えられるよう、配慮してあげられる環境づくりが大切です。発達障害を持つ子どもたちが、社会の中で自立し、輝ける場所を見つけるには、周囲の理解と継続的な関わりが不可欠です。

発達障害の子どもたちには、一人ひとり異なる才能や関心があります。それを早期に見つけ、伸ばし、さらに活かせる「場」へと繋げていくことが、親や教育者にできる最も重要なサポートだと言えるでしょう。

「何ができるか」ではなく、「何が好きか」「何なら続けられるか」を一緒に探してあげることが、子どもの将来を支える第一歩になります。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
Table of Contents